最高裁判所第三小法廷 昭和42年(オ)1362号 判決 1968年5月28日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人大友要助の上告理由第一点について。
原判決の引用する第一審判決の確定するところによれば、被上告人さとみは同武夫に対し上告人の承諾なくして本件土地の一部(原判決添付図面表示の(イ)(ロ)(ハ)(ニ)(イ)の各点を順次結んだ直線によつて囲まれる部分)を転貸したことになるが、被上告人さとみと同武夫とが同居の夫婦であることその他、両者の生活関係および本件土地の使用状況等を考えると、被上告人さとみの右転貸は上告人の承諾がなくても上告人との間の賃貸借契約上の信頼関係を破壊するに足りない特段の事情があるものとするのが相当であるというのであつて、これによると、右無断転貸を理由とする解除は効力を生じないとした原判決の判断は正当である。被上告人両名の関係に所論のような変動を生じ、これにより前記転貸を賃貸人(上告人)に対する背信行為と認めるに足りないものとした特段の事情が解消されたときは、また、その時点において別途判断すれば足り、一般にこのような事情の変更が将来生じうるということは、なんら前記の結論に消長をきたすものではない。原判決にはなんら所論の違法はなく、論旨は採用できない。
同第二点について。
所論の当裁判所昭和三七年(オ)第一八号、同四一年四月二七日大法廷判決(民集二〇巻四号八七〇頁)は事案を異にし、本件に適切でない。論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 松本正雄 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 飯村義美)